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Docs02. 設計エージェントの API 設計

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エージェントの API 設計

この記事の目的

自分たちの Agent を API として他システム・他チーム・外部顧客に公開する際の**契約(インターフェース)**を設計できるようになります。非同期ジョブ API・ステータスモデル・ストリーミングLLM の応答を生成と同時に逐次受信・表示する方式。Agent の体感品質を左右する基本技術。・冪等キー・部分結果・バージョニング・メータリングという、Agent 特有の性質が API 面に現れる論点を扱います。

対象読者

  • 自社の Agent を製品 API・社内共通 API として公開するエンジニア
  • Agent 機能を既存プロダクトの API 面に組み込むアーキテクト・テックリード

前提知識

本文

概要: 実行の状態を API の契約にする

Agent を API として公開するときは、即時に結果を返す CRUD API に加えて、実行状態を表すリソースが必要になる場合があります。HTTP・REST の設計で表現できますが、次の性質を契約に織り込みます。

  1. 実行時間が長く、分散が大きい: 数秒で終わるタスクと数十分かかるタスクが同じエンドポイントに来ます
  2. 非決定的で、部分的に成功する: 同じ入力でも結果が揺れ、「5 件中 3 件だけ処理できた」が正常系として起きます
  3. 途中経過に価値がある: 進捗・中間結果・承認待ちという「実行中の状態」を呼び出し側が知る必要があります

本記事の分担は「機械間の契約」です。人間のユーザーに進捗をどう見せるかはストリーミングと Agent の UX 実装パターンが、中断・再開を内部でどう実装するかは非同期・長時間タスクの設計(耐久実行)が正本で、本記事はそれらを外部に公開する約束事へ写します。内部でできないことは契約にできないため、内部設計が先です。

同期かジョブ型か

最初の分岐は、リクエストへの応答で結果を返す(同期)か、ジョブとして受理して後から結果を取らせる(ジョブ型)かです。判断基準は実行時間の分布で、平均ではなく p99 で判断します(実行形態の選び方はデプロイとスケーリングと同じ軸です)。HTTP 接続を安心して保持できる時間(経路上のタイムアウトを考慮すると通常は数十秒)を p99 が超えるなら、ジョブ型にします。

ジョブ型 API の基本形は次の 3 点セットです。

  • 投入: POST /jobs がジョブを受理し、ジョブ ID と状態照会先を返す(HTTP 202)。202 は受付済み・処理未完了を示し、最終的な成功を保証しません(RFC 9110 §15.3.3 )
  • 照会: GET /jobs/{id} が現在の状態と、完了していれば結果を返す
  • 通知: 完了をポーリング(定期照会)、Webhook(呼び出し側の URL への通知)、またはイベントストリームで伝える。外部顧客向けはポーリング + Webhook の併用が既定です

注意すべきは、同期からジョブ型への変更は破壊的変更だということです。「今は数秒で終わるから同期でよい」と始めると、タスクが重くなった時点で全利用者の呼び出しコードが書き直しになります。実行時間の伸びが見込まれる Agent では、最初からジョブ型で公開し、速いタスクは「すぐ完了状態になるジョブ」として扱う設計が安全です。

ステータスモデルと部分結果

ジョブの状態遷移は契約の中核です。Agent では「成功/失敗」の 2 値では足りず、少なくとも承認待ち・部分成功・キャンセルを一級の状態として持ちます。

エージェントの API 設計: ステータスモデルと部分結果の図エージェントの API 設計: ステータスモデルと部分結果の図
エージェントの API 設計: ステータスモデルと部分結果の図
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図の中をスクロールして読めます。キーボードでは図の領域へ Tab で移動し、矢印キーを使います。読み終わったら、この見出しをもう一度選ぶと閉じます。

エージェントの API 設計: ステータスモデルと部分結果の図エージェントの API 設計: ステータスモデルと部分結果の図

ストリーミングとイベント設計

進捗をストリームで流す場合、粒度は 3 段階から選びます。

粒度内容向く用途
トークン単位モデル出力の逐次ストリーム対人チャット UI(機械間連携には過剰)
ステップ単位ツール実行の開始・完了、フェーズ遷移機械間連携の既定。進捗率・中間結果の受け渡し
マイルストーン単位大きな節目(受理・承認待ち・完了)のみWebhook 通知。イベント数を抑えたい統合

ここでの最重要原則は、イベントスキーマは公開契約であり、内部実装の生ログではないことです。Agent ループLLM が「観測 → 思考 → 行動」のサイクルを繰り返し、完了・失敗・上限のいずれかの停止条件まで自律的に処理を続ける制御構造。の内部イベント(生のツール名・プロンプトの断片・思考過程)をそのまま流すと、2 つの問題が起きます。第一に、内部のツール構成やプロンプトを変更するたびに API の破壊的変更になります。第二に、内部情報(システムプロンプトの内容、内部システムの構成)が外部に漏れる経路になります(データ漏えい対策)。内部イベントを公開用の安定したイベント型(例: step_started / step_completed / progress / approval_required)へ写像する変換層を 1 枚置きます。

冪等性と再試行の契約

ネットワーク断やタイムアウトで応答を受け取れなかった呼び出し側は、同じ要求を再送します。何も設計しなければ、再送のたびに同じタスクがもう 1 つ走ります — Agent では二重実行が「二重のコスト」と「二重の副作用(メール 2 通・注文 2 件)」を意味するため、通常の API より深刻です。

対策の標準形が**冪等キー(idempotency key)**です。呼び出し側がリクエストに一意なキーを付け、サーバーは同一キーの再送に対して新しいジョブを作らず、最初のジョブ(またはその結果)を返します。契約として次を定義します。

  • スコープと保持期間: キーの一意性の範囲(例: テナントと業務操作)と、何時間・何日まで同一視するか。認証用 API キーの更新で同じ操作の重複排除が失われない設計にします
  • ペイロード不一致の扱い: 同じキーで異なる内容が来たらエラーにする(サイレントに片方を無視しない)
  • どの操作に必須か: 少なくともジョブ投入と、承認などの副作用を持つ操作すべて

API 層では、キーの登録とジョブ作成を一意制約・トランザクション等で原子的に行い、同時再送でもジョブが増えないようにします。内部の重複実行対策(非同期・長時間タスクの設計(耐久実行)の冪等性同じ操作を複数回実行しても副作用の結果が 1 回と変わらない性質です。事前の実行済み確認だけでは並行実行や記録前クラッシュを防げず、受け側の原子的な重複排除などの実装条件が必要です。、エージェントの API 設計)とは層が異なります。ワーカーの再試行やジョブ再作成でも同じ業務操作を二重反映しないよう、外部の副作用先まで安定した業務キーを引き継ぎます。受信側の重複排除契約がない場合、応答不明の操作は自動再送せず、結果を照合してから再実行可否を決めます。

バージョニングと互換性

Agent API にはスキーマの互換性と挙動の互換性という 2 つの互換性があります。リクエスト・レスポンスの形(スキーマ)が変わらなくても、内部のモデル更新やプロンプト改善で出力の分布・傾向は変わり、利用者の下流処理(出力のパースや品質前提)が静かに壊れえます(バージョニング・デプロイ・モデル更新追従の問題が、今度は自分が提供者側として降りかかる形です)。

メータリングと課金・上限

Agent API の原価はトークン従量で変動します。課金の計測単位は、原価との連動と利用者の予測可能性のトレードオフで選びます。

計測単位提供側のリスク利用者側の体験
トークン従量低(原価に連動)請求が予測できない
タスク数(実行回数)中(重いタスクで原価割れしうる)予測しやすい。単価にばらつきを織り込む必要
成功課金(成功したタスクのみ)高(失敗コストを提供側が負担)最も納得感が高い

どの単位で課金するにせよ、内部のメータリングはテナント・API キー別に正確に取ることが先です(マルチテナント設計)。加えて、利用者側のコスト事故(暴走ループでの大量投入)を防ぐ上限(クォータ)と、超過時の応答(HTTP 429 と再試行までの待ち時間の提示)を契約に明記します。認証は API キーまたは OAuth を使い、「呼び出し元ユーザーの権限で動くのか、サービスとしての権限で動くのか」を最初に決めます(エージェントの認証・認可)。

実行中の指示変更を API 契約に含める

長時間実行では、利用者が条件を変えることを前提にします。自社 API で指示変更を受け付けるなら、どの run のどの版に対する更新か、受理した時点、完了済みの処理、取り消せない副作用を応答に含めます。単なる「キャンセル成功」と業務上の巻き戻し完了を同じ状態にしません。

2026-09-10 確認の OpenAI Astra / Responses API には、WebSocket で追加指示を送る mid-turn steering と、結果を call_id で返す非同期ツールがあります。この提供 API を使う場合も、自社 run ID とプロバイダーの response / call ID を対応付け、遅れて届いた結果や重複通知を処理します。利用者の変更によって支払先・対象ファイル・実行引数が変わる場合は、認可と承認の対象を再評価します。

実務での注意点

アンチパターン

  • 長時間タスクを同期 HTTP で待たせる → 経路上のタイムアウトで切断され、呼び出し側の再送で二重実行になる → ジョブ型 + 冪等キーを最初から契約にする
  • 内部イベントをそのまま公開スキーマにする → 内部のツール・プロンプト変更が破壊的変更になり、内部情報の漏えい経路にもなる → 公開用イベント型への写像層を置く
  • 冪等キーなしで「失敗したらリトライしてください」と案内する → 再送のたびにタスクが増え、コストと副作用が二重になる → 副作用のある操作すべてに冪等キーを必須にする
  • 結果を全か無かで表現する → 部分成功が捨てられ、呼び出し側が成功分まで全再実行する → 項目別ステータス + partial 状態を一級市民にする
  • 挙動の変更を無告知で行う → スキーマ互換でも利用者の下流品質が静かに劣化し、信頼を失う → 変更履歴・事前予告・利用者側回帰テストの推奨を運用に組み込む

チェックリスト

  • 実行時間の p99 を根拠に同期/ジョブ型を選んだ(迷ったらジョブ型)
  • ステータスモデルに承認待ち・部分成功・キャンセルが含まれている
  • エラーがリトライ可否・入力起因・ポリシー拒否で分類され、機械可読になっている
  • 進捗イベントが公開契約として定義され、内部実装から写像層で分離されている
  • 冪等キーの仕様(スコープ・保持期間・ペイロード不一致時の挙動)を定義した
  • スキーマと挙動の 2 つの互換性について、告知・予告の経路を決めた
  • メータリングの単位・上限・429 応答を契約に明記した
  • 呼び出し元の認証と、Agent が動く権限(ユーザー代理かサービスか)を決めた

関連トピック

参考資料

TODO・未確認事項

なし