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Docs13. ドメイン応用執筆・翻訳ワークフローの設計

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執筆・翻訳ワークフローの設計

この記事の目的

長文の執筆・翻訳を、品質を管理しながら量産できるワークフローとして設計できるようになります。長文生成の分割統治・スタイルと用語の統制・翻訳工程(機械翻訳後編集)の設計・人が見る箇所の絞り込み・スタイル準拠の自動評価を、実務の判断として持ち帰れる状態を目指します。

対象読者

  • ドキュメント・記事・マニュアル・翻訳を、品質を保ちながら量産する仕組みを作るエンジニア・コンテンツ責任者
  • 単発の生成はできるが、それを「レビューと統制のあるパイプライン」に組み上げたい実装者

前提知識

本文

概要: 品質は「一発生成」ではなく「工程」で作る

長文の執筆・翻訳を LLM で量産しようとすると、「1 回の生成で全部書かせる」やり方はすぐ頭打ちになります。長くなるほど一貫性が崩れ、用語がぶれ、後半で失速します。品質は一発の賢さではなく、分割統治と工程設計で作ります。

このライブラリ自身が、その一例です。テンプレート(templates/doc-template.md)で構造を固定し、執筆規約(AGENTS.md / CLAUDE.md)でスタイルを統制し、独立レビューと lint で検証する、という工程で品質を保っています。以下では、この「工程で品質を作る」考え方を、執筆と翻訳のワークフローとして一般化します。

長文生成の分割統治(アウトライン駆動)

長文は、一度に書かせず、アウトライン → セクション → 統合の順で分割して作ります。

  • アウトラインを先に確定する: 全体の構成(見出しと各節の要点)を先に生成・確定し、それを骨格にします。骨格があると、各節を独立に生成でき、抜けや重複が見えます
  • セクション単位で生成する: 各節を、アウトラインと「隣接する節の要約」を文脈として個別に生成します。全文を毎回コンテキストに載せるより、必要な文脈だけを渡すほうが安定します(コンテキストの圧縮と隔離)
  • 一貫性を後段で担保する: 分割生成は、節ごとに用語・トーン・主張がぶれる弱点があります。統合の段で、用語の統一・重複の除去・つなぎの調整をします。分割で速く書き、統合で揃える、が基本形です

スタイル・用語の統制(スタイルガイド・用語集)

品質の量産には、「良い文章とは何か」を明文化して機械に渡すことが要ります。人の頭の中の基準では、量産で必ずぶれます。

  • スタイルガイドを資産として持つ: 文体(敬体か常体か)・表記ルール・禁止事項を明文化し、プロンプト資産として一元管理します。各生成はこれを参照するので、改訂を以後の生成に適用できます。既存成果物へ反映するには、再検査・必要な修正や再生成を行います
  • 用語集を適用し、検証する: 訳語・製品名・専門用語の対応表を用意し、生成後に用語集どおりか自動チェックします。「適用を指示する」だけでは守られないことがあるため、生成と検証の両方に用語集を効かせます
  • 例が仕様として働く: 望ましい文章の実例を数個渡すと、スタイルガイドの文字だけより伝わります(プロンプトエンジニアリングの基礎技法の少数例)。ただし例の偏りは出力の偏りになるため、代表的な例を選びます

翻訳ワークフロー(文脈保持・用語統一・MTPE)

翻訳は、執筆と共通点が多い一方、原文への忠実さという固有の制約があります。品質を管理する定番が、機械翻訳後編集(MTPE / Machine Translation Post-Editing)です。

  • 文脈を保持して訳す: 文を 1 文ずつ孤立して訳すと、指示語・敬語・専門用語の一貫性が崩れます。段落・文書単位の文脈を渡し、前後関係を保った訳にします
  • 用語を統一する: 用語集(グロッサリ)と、過去訳の対訳メモリAgent が「覚えている」ように見えるデータの総称。短期記憶(コンテキスト)・作業状態・長期記憶(外部ストレージ)の 3 層に分けて設計する。を適用し、同じ語が文書内・文書間でぶれないようにします。これは翻訳品質の体感を最も左右する要素です
  • MTPE の工程を設計する: 「機械翻訳 → 人による後編集」の工程で、人がどこをどこまで直すかを決めます。必要な品質、契約、用途に応じて後編集の範囲を決めます。ISO 18587 の公開概要 は、完全な人による後編集と担当者の能力を対象にしています。軽い修正で足りる用途と全文確認が必要な用途を区別し、全文確認を採る場合も工程全体の品質・所要時間で効果を測ります
  • 後編集の負担を減らす前処理: 訳しにくい原文(曖昧・長すぎる文)は、前処理で整えると後編集が軽くなります。工程全体で人の手を減らす設計をします

レビュー工程の設計(人が見る箇所の絞り込み)

生成・自動検査・人のレビューの時間を測り、品質要件を満たす工程を選びます。リスクや契約上、全文のレビューが必要な場合もあります。機械検査で定型的な確認を減らし、人が意味や根拠を確認する時間を確保します。

  • 機械で落とせるものは機械で落とす: 用語違反・表記ゆれ・リンク切れ・スタイル違反は、自動チェック(lint)で先に落とします。人はそこに時間を使いません
  • 人はリスクの高い箇所に集中する: 事実の正しさ・機微な表現・重要な結論など、間違えると被害が大きい箇所に人のレビューを寄せます。機械による低確度の印付けは振り分け候補になりますが、自己申告の確信度を過信しません。高確度と判定した箇所も抜き取り、見逃しを測ります
  • レビュー結果を還流する: 人が直した箇所は、スタイルガイド・用語集・プロンプトの改善材料です。同じ指摘を繰り返さないよう、工程に戻します(フィードバックループの運用)

評価(judge + 人手・スタイル準拠の自動チェック)

執筆・翻訳の品質は、正解が 1 つでないため評価が難しいドメインです。自動チェックと judge と人手を組み合わせます。

  • 決定的チェックを先に: 用語集の文字列照合・定義済みの表記ルール・リンク到達性などはコードで検査できます。ただし文脈依存の用語の適否や、リンク先が主張を支えるかは別途確認します。ここは自動化を厚くします
  • 開放的な品質は judge + 人手: 自然さ・一貫性・原文への忠実さは、基準を与えたLLM-as-a-Judgeで一次判定し、judge 自体の信頼性を人手ラベルとの一致で検証します。日本語の文体・自然さは日本語品質の評価の観点を使います
  • 人手評価を賢く使う: 人にも誤りや評価の揺れがあるため、評価基準を共有し、判断が割れた例を調整します。リスクや品質要件に応じ、全数確認またはサンプリングと重点評価を選びます。judge の低確度箇所だけを見ず、高確度と判定した箇所の誤りも測ります

実務での注意点

アンチパターン

  • 長文を一度に全部生成させる → 後半で一貫性が崩れ用語がぶれる → アウトライン → セクション → 統合の分割統治にする
  • スタイル基準を人の頭の中に置く → 量産で必ずぶれる → スタイルガイド・用語集を明文化しプロンプト資産として管理する
  • 用語集を「指示するだけ」で守らせる → 守られないことがある → 生成後に用語集準拠を自動チェックする
  • 翻訳を 1 文ずつ孤立して訳す → 指示語・敬語・用語の一貫性が崩れる → 段落・文書単位の文脈を保持して訳す
  • 確認範囲を品質要件より先に減らす → 必要な品質や契約条件を満たせない → 全文確認の要否を決め、定型的な検査は lint で補助する
  • 人の修正を工程に還流しない → 同じ指摘を繰り返す → 修正をスタイルガイド・用語集・プロンプトの改善に回す

チェックリスト

  • 長文をアウトライン → セクション → 統合の分割統治で生成しているか
  • スタイルガイド・用語集を明文化し、プロンプト資産として一元管理しているか
  • 生成後に用語集準拠・表記ルールを自動チェックしているか
  • 翻訳で文脈を保持し、用語集・対訳メモリで用語を統一しているか
  • MTPE の後編集レベル(軽い/重い)を重要度・リスクで使い分けているか
  • 機械で落とせる欠陥を lint で落とし、品質要件に応じて人のレビュー範囲を決めているか
  • 決定的チェック + judge + 人手サンプリングの多層で品質を評価しているか

関連トピック

参考資料

TODO・未確認事項

なし