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Docs10. LLM 基礎LLM の学習パイプライン(事前学習から選好調整まで)

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LLM の学習パイプライン(事前学習から選好調整まで)

この記事の目的

LLM の代表的な学習構成である「事前学習 → 指示チューニング → 選好調整」を理解し、指示追従・幻覚(hallucination)・迎合(sycophancy)と学習の関係を説明できるようになります。各性質を単一の工程だけの結果と決めつけず、プロンプトの指示と実行時の権限制御を区別するのが目的です。

対象読者

前提知識

本文

概要: 3 つの工程と、それぞれが残す「癖」

下図は InstructGPT などで示された代表的な構成を簡略化したものです。すべての LLM がこの順序・回数で学習するわけではなく、工程の反復、検証可能な報酬による強化学習、蒸留上位モデル(教師)の出力を学習データにして、小型モデル(生徒)をファインチューニングする手法。品質が確認できた特定タスクを、小型モデルで安く速く量産するためのコスト削減手段。などを組み合わせる構成もあります。点線は関連する評価観点を示し、その工程だけが原因だと断定するものではありません。

LLM の学習パイプライン(事前学習から選好調整まで): 概要: 3 つの工程と、それぞれが残す「癖」の図LLM の学習パイプライン(事前学習から選好調整まで): 概要: 3 つの工程と、それぞれが残す「癖」の図
LLM の学習パイプライン(事前学習から選好調整まで): 概要: 3 つの工程と、それぞれが残す「癖」の図
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LLM の学習パイプライン(事前学習から選好調整まで): 概要: 3 つの工程と、それぞれが残す「癖」の図LLM の学習パイプライン(事前学習から選好調整まで): 概要: 3 つの工程と、それぞれが残す「癖」の図

事前学習: 次トークン予測で知識を得る

事前学習(pre-training)は、Web・書籍・コードなどの大量テキストで「次のトークンを当てる」課題をひたすら解かせる工程です。正確な予測のためには文法・事実・推論のパターンが必要になるため、この単純な課題から言語能力と知識が生まれます。実務に直結する帰結が 3 つあります。

指示チューニング(SFT): 指示に従う形式を学ぶ

教師ありファインチューニング(supervised fine-tuning、SFT)は、模範となる入出力で追加学習する方法です。指示と望ましい応答を使う指示チューニングでは、対話・指示追従・出力形式を調整します。SFT で新しい事実を学べないわけではありませんが、学習効率や誤答への影響はデータと手法に依存します。

新知識の学習と幻覚増加を調べた Gekhman らの実験  は、対象の closed-book QA で新しい事実の学習が遅く、学習に伴い幻覚が増えることを報告しています。これは全 FT の不可能性を示す結果ではありません。更新頻度・出典・削除や権限管理が必要な知識には検索を基本候補とし、FT は形式・振る舞いの改善と事実再現性を分けて評価します(ファインチューニングと蒸留)。

選好調整: 「良い応答」の基準を最適化する

選好調整(preference tuning)は、複数の応答候補への人間(または AI)の好み(どちらが良いか)を集め、好まれる方向へモデルを最適化する工程です。人間のフィードバックからの強化学習(RLHF人間の選好から報酬モデルを学び、KL 正則化付きでその報酬を最大化するよう方策(モデル)を最適化する選好調整の枠組み。有用さ・無害さ・トーンを形作る一方、迎合や報酬ハッキングの由来でもある。)や、選好データで直接最適化する手法(DPO報酬モデルの学習と強化学習の 2 段を、選好データから直接 1 段で最適化する選好調整の手法。「報酬モデルは方策に暗黙に含まれる」ことを使い、正規化定数を消去して選好から直接学ぶ。実装が軽い一方、明示的報酬モデルがないぶん細かい制御は RLHF に劣る。 など)が使われます。有用さ・無害さ・トーンといった「良さ」はここで形作られ、安全性の拒否挙動もここで調整されます。

この工程から生まれる性質: 幻覚・迎合・拒否

実務で悩まされる LLM の癖の多くは、工程の副産物として説明できます。

そして最も重要な帰結が、システムプロンプトが「効く」理由と限界です。モデルが指示に従うのは、そう振る舞うよう学習された傾向があるからで、命令を強制するインタープリタが中にあるわけではありません。だからプロンプトの禁止事項は破られえます。「プロンプトの指示はお願い、コードによる強制だけが保証」という本ライブラリの中心原則(ガードレール)は、学習工程のこの性質から直接導かれます。

この理解が効く場面

実務での注意点

アンチパターン

  • 幻覚を「もっと強く禁止する」プロンプトで解決しようとする → 目的関数由来の性質は指示では消えない → 根拠の外部供給(RAG)・出典要求・検証ステップで構造的に抑える
  • 社内知識をモデルの記憶に期待する → 学習データにない・まれな知識は再現されない → 検索で都度渡す設計にする
  • 「はい/いいえ」で聞く誘導的なレビュー依頼をする → 迎合により同意へ偏る → 中立な形式・明文化した基準・複数観点で聞く
  • システムプロンプトの禁止事項をセキュリティ境界として扱う → 指示は学習された傾向であり上書きされうる → 権限・ガードレールなどコード側の強制と併用する

チェックリスト

  • 最新性・正確性が必要な情報を、モデルの記憶ではなく検索・ツールで渡している
  • 幻覚対策が指示(お願い)だけでなく、構造(根拠供給・出典・検証)を含んでいる
  • LLM に判定・レビューをさせる箇所で、迎合バイアスへの対策(中立な聞き方・基準明文化)がある
  • プロンプトの禁止事項に、コード側の強制(権限・ガードレール)が対応している
  • FT を検討する際、「形式の安定化」か「知識の注入」かを区別している

関連トピック

参考資料

TODO・未確認事項

なし