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この記事の目的
「テキストボックスに書かせる」以外の選択肢 — 構造化入力・成果物 UI・インライン支援・バックグラウンド実行 — を使い分けられるようになります。チャットが向く場面と向かない場面を見極め、ユーザーに書かせずに AI の価値を届ける設計判断を持ち帰れる状態を目指します。
対象読者
- AI 機能の UI を「チャットありき」で考えず、最適な形を選びたいデザイナー・PM・エンジニア
- 「テキストボックスを置いたが使われない」を、UI の形から見直したい実装者
前提知識
- AI プロダクトの UX パターン — 不確実性・待ち時間・信頼のパターン
- 会話設計 — チャットを選ぶ場合の会話体験
本文
概要: チャットは選択肢の 1 つにすぎない
AI プロダクトというと、まずチャットの UI を思い浮かべます。しかしチャット、すなわち「テキストボックスに自由に書かせる」形は、万能ではありません。何を依頼できるか分からないテキストボックスは、利用開始の障害になる可能性があります。Human-AI Interaction のガイドライン の能力提示・起動・訂正の観点を参考に、対象タスクと利用者で入力方法を比較します。
チャットは強力ですが、それは数ある選択肢の 1 つです。本記事は「テキストボックス以外の形」を並べ、いつどれを使うかを整理します。狙いは、ユーザーにプロンプトを書かせずに AI の価値を届けることです。なお、機械間のジョブ型インターフェースは エージェントの API 設計 が扱い、本記事は対人の UI 形態を扱います。
チャットが向く場面・向かない場面
まず、チャットが適切かを見極めます。
- チャットが向く: 依頼が多様で事前に選択肢を用意できない、対話で絞り込む価値がある、探索的なやり取りが中心、といった場面です
- チャットが向かない: やることが定型的で選択肢を出せる、入力に決まった構造がある、既存の作業フローに埋め込みテキストや画像を、意味的な近さが距離に対応する数値ベクトルに変換したもの。RAG・記憶・分類の土台で、「何が近いか」はモデルで変わるため自社データで評価して選ぶ。モデル変更は全チャンクの再インデックスを伴う。たい、初心者が多い、といった場面です。フォームや直接操作が適するかを試作で比較します。初心者でも会話が適する用途はあります
- 「とりあえずチャット」を疑う: 流行だからチャットにする、ではなく、タスクの性質から UI を選びます
プロンプトレス設計(書かせない)
ユーザーに文章を書かせず、選ぶ・押す・文脈から起動する形で AI を動かす設計です。
- ボタン・アクションで起動: 「要約する」「言い換える」「返信案を作る」をボタンにします。ユーザーはプロンプトを考えず、意図をワンクリックで伝えられます
- テンプレートと選択肢: よくある依頼をテンプレート化し、穴埋めや選択で使えるようにします。何を入力すればよいかを示せる一方、選択肢にない依頼を妨げない逃げ道も用意します
- 文脈からの自動起動: ユーザーの操作・状況から、AI が支援を先回りで提示します(過剰にならない範囲で — プロアクティブエージェントの UX)。「今この画面でよくある操作」を提案する形です
- 構造化入力とチャットの併用: 骨格は構造化入力(フォーム・選択)で受け、自由記述が要る部分だけテキストにする、という組み合わせも有効です
成果物中心 UI(会話は脇役)
ドキュメント・画像・コードといった成果物が主役で、AI との対話は脇役、という形です。
- 成果物を中心に置く: 編集中のドキュメントやキャンバスを画面の主役にし、AI はその横で編集・提案を手伝います。会話ログを追うのではなく、成果物そのものを見ながら作業します
- AI の変更を成果物上で見せる: AI の提案を、成果物への差分・ハイライトとして示し、採否を選べるようにします。対象箇所を見ながら確認できるため、所要時間と誤操作を測って効果を確かめます
- 会話は補助線: 「なぜそう直したか」を聞ける対話は残しつつ、主導権は成果物に置きます
インライン支援(埋め込み型)
独立した AI 画面を持たず、既存のエディタ・フォーム・ツールに埋め込む形です。
- 作業の場に溶け込ませる: 文章を書いているエディタ、入力しているフォームの、その場で支援します。画面移動を減らせますが、提示のタイミングや量によっては作業を妨げるため評価します
- 邪魔しない既定: インライン支援は、求められたときに出て、普段は引っ込んでいる設計にします。常に割り込むと作業の邪魔になります
- 受け入れ/却下を軽く: 提案の採否を、キー操作一つで選べるようにします(コード補完のような体験)
バックグラウンドエージェントの UI(投げて後で受け取る)
時間のかかる処理を、その場で待たせず投げて後で受け取る形です。
- 待たせない: 数十秒〜数分かかる処理は、同期的に待たせず「実行中」にして、終わったら通知します(非同期・長時間タスクの設計の UX 面)
- 進捗と結果の置き場: 実行中のタスク一覧・完了通知・結果の受け取り場所を用意します。「投げたものがどこに行ったか」が分かる導線が要ります
- 割り込みと確認: バックグラウンド処理でも、途中で承認が要る場面(Human-in-the-Loop 設計)は通知して確認を挟みます
複合(ハイブリッド)
実際のプロダクトは、単一の形ではなく組み合わせになることが多いです。
- タスクごとに最適な形を選ぶ: 探索はチャット、定型はボタン、制作は成果物中心、長時間処理はバックグラウンド、と使い分けます
- 一貫した枠組みで束ねる: 複数の形を使っても、AI の関与の見せ方・信頼の枠付け(AI プロダクトの UX パターン)は一貫させます
実務での注意点
アンチパターン
- 流行だからチャットにする → 定型タスク・初心者に使いにくい → タスクの性質から UI を選ぶ
- 白紙のテキストボックスで放り出す → 何を書けばよいか分からず離脱 → ボタン・テンプレート・選択肢でプロンプトレスに導く
- 会話ログを主役にして成果物を埋もれさせる → 現物が見えず作業しにくい → 成果物を中心に置き、AI の変更を差分で見せる
- インライン支援が常に割り込む → 作業の邪魔になる → 求められたときに出て普段は引っ込む
- 長時間処理をその場で待たせる → 体感が悪く離脱する → バックグラウンド化し、進捗と結果の置き場を用意する
- 複数の UI 形態で信頼の見せ方がバラバラ → 混乱する → 関与の見せ方・信頼の枠付けを一貫させる
チェックリスト
- タスクの性質から、チャットが適切かを見極めたか
- 定型・構造のある入力を、ボタン・テンプレート・選択肢でプロンプトレスにしたか
- 制作系は成果物を中心に置き、AI の変更を差分・ハイライトで見せているか
- インライン支援を、邪魔しない既定(求められたら出る)にしたか
- 長時間処理をバックグラウンド化し、進捗・完了通知・結果の置き場を用意したか
- 複数の UI 形態を使う場合、信頼の見せ方を一貫させているか
関連トピック
- AI プロダクトの UX パターン — 不確実性・待ち時間・信頼のパターン(全形態に共通)
- 会話設計 — チャットを選ぶ場合の会話体験
- プロアクティブエージェントの UX — 文脈からの自動起動・先回り
- エージェントの API 設計 — 機械間のジョブ型インターフェース(本記事は対人の形)
- 非同期・長時間タスクの設計(耐久実行) — バックグラウンド実行の基盤
- Human-in-the-Loop 設計 — バックグラウンド処理中の承認
参考資料
- Amershi ほか, Guidelines for Human-AI Interaction (CHI 2019) — 利用開始、却下・訂正、制御の設計。本文の UI 類型はタスクに合わせて選ぶ設計案です(アクセス日: 2026-09-10)
TODO・未確認事項
なし