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Docs08. コーディングエージェントルールファイルと設定の設計

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ルールファイルと設定の設計

この記事の目的

プロジェクトの規約や制約をコーディングエージェントコードベースを読み、ファイルを編集し、コマンドを実行して検証するループで開発タスクを遂行する Agent。コード補完と異なり「タスク単位の委任」を受けられる。に伝える「ルールファイル」を設計・保守できるようになります。何を書くと効果があり、何を書くと逆効果になるかを判断し、モノレポや組織展開でのスコープ設計まで扱えるようになることが目標です。

対象読者

  • コーディングエージェントの出力がプロジェクトの規約に従わず、毎回同じ指摘を繰り返しているエンジニア
  • エージェント利用をリポジトリの規約として整備したいテックリード

前提知識

本文

概要

ルールファイル(rules file)は、コーディングエージェントがセッション開始時に読み込む、プロジェクト固有の指示書です。ビルド・テストの実行方法、コーディング規約、触ってはいけない領域などを記述し、毎回の依頼文で繰り返さなくても済むようにします。

エージェントへの指示は「恒常的な規約はルールファイル、そのタスク限りの指示は依頼文」と分担するのが基本です。依頼文の設計は コーディングエージェントへの依頼設計 を参照してください。

ルールファイルの種類と対応関係

2026 年時点では、ツール横断の共通形式である AGENTS.md への収斂が進む一方、ツール固有の形式も並存しています。代表的な形式は次のとおりです。

形式主な利用ツール特徴
AGENTS.mdOpenAI Codex、Gemini CLI、Cursor、GitHub Copilot(coding agent)など複数ツールツール非依存の共通形式。マルチツール環境の第一候補
CLAUDE.mdClaude Codeユーザー / プロジェクト / サブディレクトリの階層をサポート
.cursor/rules/Cursor複数ファイル分割と適用条件(グロブ)を指定可能
.github/copilot-instructions.mdGitHub Copilotリポジトリ単位のカスタム指示
GEMINI.mdGemini CLI階層的な読み込みをサポート

複数ツールを併用するチームでは、正本を 1 つに決めて他形式から参照(またはシンボリックリンク・生成)する構成にしないと、ルールの二重管理が発生します。

内容設計(何を書くか)

ルールファイルはコンテキストウィンドウを消費します。「書けば書くほど従ってくれる」わけではなく、長くなるほど個々の指示の重みは薄まります。短く・検証可能・実行可能が原則です。

書くべきもの:

  • ビルド・テスト・リント・型検査の実行コマンド(エージェントが自己検証に使う)
  • リポジトリ構造の要点(どこに何があるか。全ディレクトリの列挙ではなく判断に必要な範囲)
  • 機械が従える形のコーディング規約(例: 「エラーは Result 型で返す。例外は境界層のみ」)
  • 触ってはいけない領域(自動生成物、ベンダーコード、マイグレーション済みファイル)
  • コミット・PR の規約(メッセージ形式、ブランチ運用)
  • ドメイン固有の用語・略語(エージェントが誤解しやすいもの)

書くべきでないもの:

  • 一般的な「良いコード」の説明(モデルは既に知っており、トークンの無駄)
  • 頻繁に変わる情報(依存バージョン、担当者名。コードや別ファイルを正本にする)
  • 秘密情報・内部 URL・環境依存の絶対パス
  • 人間向け README の複製(エージェントに必要なのは「実行方法と制約」であり、プロダクト紹介ではない)

判断基準として「エージェントがこの指示に従わなかったとき、レビューで機械的に気づけるか」を使うと、曖昧な精神論(「保守性の高いコードを書く」など)を排除できます。

階層化とスコープ

多くのツールは複数レベルのルールを合成して読み込みます。

ルールファイルと設定の設計: 階層化とスコープの図ルールファイルと設定の設計: 階層化とスコープの図
ルールファイルと設定の設計: 階層化とスコープの図
図を元の大きさで表示

図の中をスクロールして読めます。キーボードでは図の領域へ Tab で移動し、矢印キーを使います。読み終わったら、この見出しをもう一度選ぶと閉じます。

ルールファイルと設定の設計: 階層化とスコープの図ルールファイルと設定の設計: 階層化とスコープの図
  • プロジェクトルートを正本とし、リポジトリにコミットしてチームで共有します
  • サブディレクトリのルールはモノレポで有効です。パッケージごとの技術スタック差(例: apps/web は TypeScript、ml/ は Python)をそれぞれの階層に書き、ルートには共通事項のみ残します
  • ユーザーレベルには個人の好みだけを書き、プロジェクトの規約を書かない(チームメンバー間で挙動が変わるため)
  • 合成の順序・優先度はツールごとに異なるため、併用時は各ツールの仕様を確認します

Codex の起動時の自動読込は、プロジェクトルートから開始時の作業ディレクトリ(cwd)までの経路が対象です。cwd より下は探索しないため、ルートで起動しただけでは apps/web/AGENTS.md はこの経路に入りません。下位の規約を使うには、そのディレクトリで起動して読込結果を確認します。ルートで作業を始める運用なら、共通の入口に対象別の規約パスと読む条件を書き、必要な文書を明示的に読むよう依頼する方法があります。これは運用上の設計例であり、パス参照だけで参照先の全文が自動注入されるという仕様ではありません。Codex の公式説明 (アクセス日: 2026-09-10)

保守と形骸化防止

ルールファイルは書いた瞬間から陳腐化が始まります。運用として機能させるには次の 3 つが有効です。

  1. 失敗駆動で追記する — エージェントが同じ間違いを 2 回したら、その再発防止をルール化します。「いつか役立ちそうなこと」を先回りで書かないことで、全ルールに実績(根拠となった失敗)がある状態を保てます
  2. ルールファイルをコードレビューの対象にする — 規約の変更は挙動の変更です。PR でレビューし、変更履歴を残します
  3. 定期的に棚卸しする — コードベースと矛盾したルール(移行済みの旧規約など)は従わせる手段がなく、エージェントの他の指示への信頼度も下げます。四半期ごと程度に実態と突き合わせます

実務での注意点

アンチパターン

  • 何でも書く巨大ルールファイル — 数千行のルールはコンテキストを浪費し、重要な指示を希釈します。従われない指示が増えるほど「ルールは無視してよい」学習をさせているのと同じです。→ 数百行以内を目安に保ち、詳細はリポジトリ内の文書へのパス参照にします
  • 人間向けドキュメントの複製 — README や設計書をそのまま貼ると、エージェントに不要な情報が大半を占めます。→ 「実行方法・制約・構造」に絞った差分を書きます
  • 一度書いて放置 — コードベースと乖離したルールは害です(存在しないコマンド、廃止された規約)。→ 失敗駆動更新と定期棚卸しを運用に組み込みます
  • 秘密情報・環境依存値の記載 — ルールファイルはコミットされ、エージェントのコンテキスト(=ベンダーへの送信データ)に毎回含まれます。→ 秘密は環境変数参照とし、権限とセキュリティ の原則に従います

チェックリスト

  • ビルド・テスト・リントの実行コマンドが書かれており、実際に動くか
  • 触ってはいけない領域(生成物・ベンダーコード等)が明示されているか
  • すべての指示が「従わなかったことに気づける」形(検証可能)か
  • トークン量を意識したサイズか(目安: 数百行以内)
  • ルールファイルの変更が PR レビューの対象になっているか
  • 複数ツール併用時、正本が 1 つに決まっているか

関連トピック

参考資料

TODO・未確認事項